鹿実・男子新体操部の監督は、樋口靖久ひぐちやすひさ監督さんといいます。コミカルなお笑い新体操の仕掛け人です。

ユニークな演技が生まれた背後には、監督や部員たちの新体操に対する熱い情熱と、強い信念がありました。

監督考案の、おもしろ演技が生まれる秘訣の独自の練習メニューも調査しました。

鹿実の新体操部、樋口靖久監督の信念「新体操を少しでも多くの人に知ってもらいたい」

お笑い新体操の仕掛け人、樋口靖久監督はスキンヘッドでちょっと怖い印象がありますが、こんな方があのおもしろい演技を構成していたんですね。

今まで、男子新体操はかなりマイナーなスポーツで、華やかなイメージはありませんでした。そもそも知名度がそれほどなかったですよね。

魅せる新体操で話題の鹿児島実業高校・新体操部。

インターハイに連続出場している強豪校ながら、話題曲に合わせてコミカルな演技を行うことで有名。

時間を取って「男子新体操を見に行くか」なんて思う人はほとんどいませんでした。

しかし、それが今や樋口靖久監督のおかげで「鹿実が出るから大会を見たい!」というファンが圧倒的に増えました。

鹿実は、その年に流行った曲やお笑いのネタを演技に取り入れることが多く、エンタメ要素が強いので、見ていて非常に楽しい演技です。

でも、ふざけているわけではなく、技術自体はとても高いのです。

「観客目線の楽しい新体操があってもいいんじゃないか」

インタビューで樋口靖久監督はこのようにコメントしていたことがあります。新体操を少しでも多くの人に知ってもらいたい、という強い信念があの演技を生み出しているのです。

そして、そこからファンが生まれてきたわけです。今では、テレビで特集を組まれるまでに、その注目が集まりました。

鹿実のおもしろ新体操は独自の練習メニュー「ネタ見せ」によって生み出されていた!

鹿児島実業のコミカルな動きは、実は生徒が自分たちで考えたもの。

鹿実には「ネタ見せ」という独自の練習メニューがあります。これは、自分たちで考えたおもしろい動きやアイディアを監督の前で披露するものです。

そして、おもしろければ採用。面白くなければ監督に「それ何?」と聞かれて、ネタの説明をさせられ(スベらされて)不採用になりますww

笑いを取りに行ってるんだけど、真剣に新体操をやっているその姿が、見る人の心をグッとつかんでいるわけです。

大会的には「真面目にやってない」ってことになって、全然優勝とかはしません。

でも、鹿実はそんな賞なんて目指してなくて、いかにお客さんを笑わせて楽しませるかを真摯に研究しているわけです。良き。

この前の新体操の大会では、22チーム中21位でした。

樋口靖久監督はなぜお笑い新体操をはじめようと思ったのか

鹿実の超独特な演技は、いつどんなきっかけで生まれたのでしょうか?

樋口靖久監督『うちは強いチームではなかったのでインターハイも毎回は出られなかった。

だから、たまに出たときくらい印象に残る演技をしたいと思って考えました…』

樋口靖久監督はこのようにコメントしていました。なるほど、最初はこういうところからゆっくりスタートしていたんですね。

この監督、大学時代に新体操で日本一になった経験があり、その時も鹿実の新体操部のように観客をわかせ、拍手喝采を浴びることはなかったそうで「彼らが羨ましい」と語った。

最初は受け入れられるまで苦労したようですね。しかしながら、堂々と演技をしてみたところ、お客さんはかなり楽しんでくれることに気がついたのです。

観客の笑顔を見て、笑い声を聞いた時に、部員は自分たちの使命を感じたんだと思います。

会場の笑いを誘うような選曲や振り付けに、当初部員たちは躊躇したという。

しかし、いざ観客の前で演技したときの観客の反応に自信を付け、今では自分たちでもよりアピールできる動きを考え、提案してくるようになった。

良いものが生まれるときは、ドラマがありますね。

【動画一覧】鹿児島実業・新体操部のおもしろ演技ww 2017・2018年~

鹿児島実業といえば、これまでにもきゃりーぱみゅぱみゅさんやゴールデンボンバー、アニメ「進撃の巨人」の楽曲を使用したユーモアに富んだキレッキレな演技で話題になった。

2014年のインターハイでは『進撃の巨人』『烈車戦隊トッキュウジャー』など奇抜な選曲と圧巻の演技で観客を沸かせた。

難易度の高い技にチャレンジしつつ、笑いもとれるパフォーマンスは、Twitterで6,000回以上拡散されるほどの話題になっています。

2013年は、ゴールデンボンバーの曲で話題になりました。なんと試合前に白塗りの選手が登場ww

白塗りをした選手が登場し、演技が始まる前から会場はざわついている。

鹿実は、このような構成を作る時に、ルール違反にならないか、相当神経を使って事前に調べているのだそうです。

2015年には、妖怪ウォッチの妖怪第一体操が組み込まれていました。キレッキレのようかいダンスに会場は笑いが起きています(笑)

面白いポイントを随所に入れつつ、キレキレのスゴ技を披露する部員たち。会場から笑い声と拍手が鳴り響いています。

おなじみの「ようかい体操第一」や「アイドルはウーニャニャの件」などにあわせて華麗な技を次々と決めていきます。

コミカルで遊び心ににあふれている一方で、決めるところはきっちり決めていく堂々とした姿がとても爽快。

何度見ても飽きない演技は、鹿児島実業にしかできないですよね。コミカルでありながら、難易度の非常に高い動きをこなす高校生をみていると、元気すらもらえます。

「真面目にやれば賞を取れる技術があるのにもったいない」何を言われても鹿実スタイルを貫く男子高校生たち

なんだかんだで、超有名にはなっているものの、目に見える栄誉や賞は手に入れていないわけです。でも、技術力・実力はもちろん、賞が狙えるレベルなわけです。

とすれば、読者の皆様も予想がつくかと思いますが…

2011年に鹿児島実業が全国の表舞台に復帰し、YouTubeやマスコミなどで話題になったことを「男子新体操の普及」という面では喜びながら

「でも、あれが男子新体操だと思われるのは困る」
「おもしろいけど、下手!」と厳しい指摘をする人もいた。

他にも、「ちゃんとやれば賞が取れるのにもったいない」「何無駄なことやってんの」といった反応をする大人たちが周囲に登場してくるわけです。

もちろん、新体操の技術は超高校レベル。厳しい練習で身につけた技術を、惜しみもなく「観客を楽しませること」に注いでいます。

「ビデオを早送りされない演技をしたかった」と言う樋口監督。

賞、っていうのは超極端に言えば、それを与える権限を持つ大人の価値観に沿う演技が出来た学校が貰えるものですよね。

そんな、古い大人が決めた基準ではなく、自分たちの基準で良いと感じるものを提供しよう、というのが鹿児島実業のスタイルなのです。

そして、そういう姿勢に惚れるファンが多いのも事実なのです。

昔からある基準やルールには、今の大人の考えしか入っていないこのスタイルでここがこのまま進めるのなら、多分タイトルは取れないだろう。

でもきっとそれに気づいてる、気づいた上でこの道を進んでる

この子達は栄誉やタイトルなんかより もっと大事なものを手に入れてる。

こんなファンのコメントもあります。何においても、我が道を突き進む姿はかっこいいですよね。

そして、おもしろいというだけではなくて、普通に実力があるわけです。

だが、彼らは、「話題になればそれでよい」にあまんじてはいなかった。「おもしろいだけじゃない、強い鹿実を見せたい!」という思いは、彼らの中に、しっかり芽生え育ってきていたのだ。

技術を高めようとする努力と、新体操への情熱を感じるその演技には、心動かされるものがあります。

マイナースポーツであった男子新体操という競技を一躍有名にしたのは、明らかに「鹿児島実業」です。

樋口靖久監督と鹿実男子新体操部の今後の躍進が楽しみです。

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